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■展覧会みてある記 ここ半年間にみた「展覧会」から

田中 淳

●前田和・草木捺彩陶展(’07.12.18〜24 日本橋三越)
昨年末、日本橋三越で学会員、前田和氏の「草木捺彩陶展」が開催された。熊本宇土市網田に陶房と住居を持つ氏が東京のデパートで行う個展は4度目。野山に自生する草や木の根、花や穂先などを植生そのままに焼成。彼独自のレリーフ陶板はか細くも美しい“花の生命”が、釉薬の色彩と描画技術で未来につなぎとめられており感動した。
折しもクリスマスシーズン。デパート美術画廊としては初イベントである会場でコンサートも行い、芸術表現の造形作品と音楽とのコラボレーションという画期的な催しでもあった。
草木捺彩陶展 会場風景

●香りと恋心―バルビエのイラストレーションと香水瓶展(’07.12.14〜23 銀座資生堂本社)
同じ頃、銀座7丁目の資生堂本社で開催された「香りと恋心―バルビエのイラストレーションと香水瓶展」もまたユニーク。フランス文学者である鹿島茂氏所蔵のジョルジュ・バルビエの華麗なイラストは20世紀の代表的な作品群であり、展示された歴史的な香水瓶を仲介に繰り広げられた化粧資料・女性風俗の変遷、また銀座の編年史資料など多彩展示であり、企業文化の展示とも呼べるものであると感じた。

●ルノワール+ルノワール展(’08.2.2〜5.6 渋谷Bunkamura)
東京渋谷Bunkamuraの「ルノワール+ルノワール展」もまた美術展として、絵画・映画両表現が協調されていた。画家ルノワールと映画監督の息子ジャンが共に好んだテーマの関係性が注目された。人間の深い情愛と喜びの生にある愉悦の表現は、絵画と映画との領域を越え、光と色と香りとが、見るものすべてを包み込む見事なものに昇華されていた。このところ数多く開催されている印象派作家の回顧展や薬師寺国宝展などの展示を通じ、基礎造形表現の素材である色彩・形態・材料を構築する可能性の追求こそ、美の源泉と思い至った。

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